最近なにかと話題のロード・レージですが、それによる事故も後を絶ちません。
昔からあることなんですが、東名高速の死亡事故から大きく取り上げられ、問題視されるようになってきました。
ロード・レージ問題
実は以前自動車保険を契約いただいていたお客さまもロードレージに関わっていらっしゃるお一人でした。笑
その方の事故事例を解説します。
その方は塗装業を営んでいる自営業の方です。
いつも塗料がたくさん付いている鳶職人さんが着用しているような仕事着でした。
職人さんを数人かかえていらして、いつもゲキを飛ばしておられました。見るからに迫力のある風貌の親方です。
当然気性も荒く、運転も荒っぽかったようです。
ある寒い冬の夜、塗装の仕事を終え、仕事で使用するハイエースに乗り込み、家路を急いでいました。
前方で道路工事があっており、片側2車線の左車線を走っていた彼の車線側がふさがれていたので、
右にウインカーを出し、ノロノロ進んでいた右車線の車列に割り込みをしたんです。
その直後から、すぐ後ろにいたベンツのセダンが異常に車間距離を詰めてきたそうです。
道路工事の場所を抜けて、普通に走り始めてからも、そのベンツはピッタリと後ろにつけて、煽ってきたそうです。
親方は、カーッと頭に血が上り、思いっきりブレーキを踏みました。
そこそこスピードも出ていたので、後ろのベンツは止まり切れずに親方のハイエースの真後ろに激しく衝突しました。
ベンツから降りてきたチンピラ風情の兄ちゃんは、事態がよくつかめず、茫然としていたそうです。
ロードレージのバトルに歩行者やほかの車両が巻き込まれなかったことが唯一の幸運でした。
さて、
もしも、あなたが裁判官なら、この事故案件の過失割合をどう決めますか?
追突だから、ベンツに100%の過失としますか?
それとも故意に事故を起こしたハイエースの過失のほうが、大きいですか?
ダメなんです!その急ブレーキ
それでは、解説します。
追突事故の場合、基本的には、追突されたほうには過失がなく、
原因は、追突車の前方不注視や車間距離不保持によるものと考えられます。よって、追突された場合過失0です。
当たり前ですね。これは、信号停車中や渋滞中の停車、一時停止の規制による停車などの際の普通の追突です。
しかし、今回の事故は明らかに態様が違います。
実は、道交法24条は、危険を防止するためやむを得ない場合を除き急ブレーキをかけてはならない、としています。
ハイエースは、道交法24条に違反して、理由のない急ブレーキをかけています。
ここで、通常、理由のない急ブレーキとは、どんな場合かというと、人が道路を横断するものと見誤ったとか
道を間違えてしまったとか、お店を発見したとか、そんな時に踏んだ急ブレーキのことを指します。
こんな場合の過失割合は、追突した車:追突された車=70:30 となります。
しかしながら、今回は急ブレーキの理由が違います。
ハイエースは、ベンツに対する嫌がらせのために、故意に急ブレーキをかけています。
その場合は、別途慎重に検討する事になりますが、以下の割合が妥当と考えられます。
ベンツ:ハイエース=50:50
そんなことしてたら、車両保険に入っててもダメですよ!
ベンツ、ハイエースとも相手から修理代の50%しか取れませんので、自腹を切って修理することになります。
でも、ハイエースに車両保険を付けていたら、いいじゃんって、言われるかもしれませんけど、厳しいです。
自動車保険約款の車両条項には、細かく言うと該当しない場合もありますが、運転者が車両所有者とすると
運転者の故意または重大な過失がある場合は、保険金を支払わない、と取り決めています。
故意や重過失の場合の保険の基本的な考え方を解説します
故意や酒酔い運転、無免許運転、赤切符相当の速度違反等の重過失による交通事故が発生し被害者がいる場合、
加害者の車両損害や怪我については、免責となり、保険金は支払われません。
当然と言えば、当然ですね。自業自得というやつです。
しかし、被害者の車両損害や怪我等については、通常通り保険金が支払われます。
意外に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、被害者保護の観点から社会的要請が強いので、そのような運用がなされています。
ですが、そもそも加害者が任意保険に入っていなかった場合は、被害者がご自身で被害の復旧をすることになります。
被害者が車両保険に入っていれば、そのご自身の車両保険を使用して、被害の修復をしていく形となります。
そんなばかなことがあるわけないだろ!と仰るかたもいますが、それが現実です。
故意や重過失の運転をしている任意保険に入っていない人から修理代を払ってもらうのは非常に困難です。
個人で裁判等をするにしても、精神的にも経済的にも時間的にも負担が大きいです。
被害者自身の車両保険を使うのが現実的です。
そうかといって、被害者側の保険会社も黙ってはいませんよ。本来加害者が払うべきものを立て替えて被害者に払っているわけです。
被害者に保険金を払うことによって、被害者から修理代の債権を獲得しますので、
その後は保険会社が法的手続きを取り、加害者に支払いを求めていきます。
ロードレージによるこのような交通事故は、経済的にも損失が大きくなり、決して得する事はありませんので、
わたしも運転中にイラっとしたときは、家族の顔を思い出すなりして、自制していきたいと思います。