今回も前回に続いて他者運転特約の具体的事例をもとにその適用可否についてお伝えします。
また、他者運転特約について、基本的な要点を見ておきます。
他者運転特約の対象外となる車の主なもの
他車運転特約は、車検証上あなた名義の車以外が何でも適用になるわけではありません。
まず、あなたと同居の親、同居の親族の車は対象外です。
あなたに配偶者があれば、配偶者の車も対象外です。配偶者は同居でも別居でも対象外です。
配偶者が別居している場合その配偶者と同居している親族の車も対象外です。
ここで、配偶者とは、戸籍上は他人でもいわゆる内縁関係にある方も配偶者となります。
また、戸籍上は同一の性別でも実質夫婦関係であれば、その方も配偶者となります。
あなたが雇われている会社の車を仕事で運転している場合も対象外です。
よく問題となりますが、あなたが常時使用している車も対象外です。
あなたが自動車関係の仕事をしている場合、お客さんから預かった車も対象外です。
その他ありますが、割愛します。主なところは、上記のとおりです。
借りた車の修理代は?
次に他者運転特約の対象となる車を借りて事故に遭ったとき、借りた車の修理代がどうなるかについて。
借りた車は、あなたが自動車保険にかけている車とみなして補償をするものです。
ですので、あなたは自動車保険に車両保険を付けていないと借りた車の修理代を賄うことはできません。
車両保険を契約しているなら、一般条件か車対車+Aかで、補償できる内容は変わります。
あなたの契約内容に沿って補償されるということです。
ここで、注意点があります。
借りた車の損害は、あなたが貸してくれた人に対して損害を賠償するという意味合いになりますから
車両保険として保険金を支払うのでなく、賠償責任保険として保険金を支払うということになります。
わかりにくいでしょうから、わかりやすく具体的に説明します。
あなたが、借りた車を運転していて、信号停車中の車に追突したとします。
前の車は当然普通の自動車保険と同じように対応します。
あなたが借りた車も破損しています。修理代は30万円です。
ところで、借りた車の時価は20万円でした。
この場合、保険金は時価までとなり20万円支払われます。
足りない10万円はあなたが手出しすることになります。
そして、他者運転特約も使用すれば保険事故としてカウントされますので、等級ダウンとなります。
また、借りた車の車両損害は、無免許運転、酒気帯び運転、麻薬等の影響での運転中は補償されませんよ。
それでは、次に具体的事例をもとに他者運転特約の適用可否についてお伝えします。
ふたつの事例とも車を借りる子供は自分で自動車保険を契約しているものとします。
事例1 いつもは実家の父親が運転している車を毎週末子供が借りて運転する
就職を機にAさんは、独立して実家を出、通勤のために車を購入し自分で自動車保険を契約しました。
Aさんは社会人のクラブ活動をしており、週末大勢の仲間と活動しています。
たくさんの人を車に乗せ移動するので、実家の父親が所有する8人乗りの車を毎週末借りています。
借りだして半年後、Aさんは、借りていた実家の車で事故を起こしてしまいました。
さて、借りていた実家の車は、他者運転特約の対象でしょうか?
まず、借りていた実家の車は、同居の親族の車ではありませんから、他の自動車ですので、そこは大丈夫です。
考えるべき点は、常時使用の車に当たるか、どうかです。
半年間も毎週末ごとに借りていた車ですが、普段は父親が管理し使用していたのであれば、セーフと思われます。
よって、この場合は他者運転特約の対象となり所定の保険金が支払われるでしょう。
事例2 実家の母親の名義の車で母親はほとんど運転せず月に1~2回子供が借りて運転する
事例1のAさんの事情を少し変えてみます。
父親が所有していた車は父親が亡くなり、母親に相続されました。
母親は2~3カ月に一度お寺に行くために車を運転するくらいです。
Aさんは、月に1~2回友人たちと遊びに行くために借りて運転しています。
そんな中、Aさんの実家の車で、事故を起こしてしまいました。
この場合、他者運転特約の対象となるでしょうか?
この場合は、補償対象外となる可能性が高いです。
微妙な案件は、必ず保険会社の調査が入りますので、個別に事情を聴き慎重に判断されることになります。
実質的に誰がその車を所有管理していたかを調べ、常時使用に該当するか調べます。
使用頻度はAさんのほうが多いように見えます。
これだけでは、弱いので、もっといくつかの要素が必要です。
例えば、ガソリン代はだれが負担していたのか、洗車をしていたのは誰か、
整備していたのは誰か、税金の支払いはだれか、等について
聞き取り調査を行います。これらの要素でAさんが関わっている割合が多いと
その車を管理して常時使用していたと判断されます。
保険会社は保険金を支払わない場合、念には念を入れて調査し裁判になっても勝てる資料を作成して終結させるようにしています。