スピッツの新曲
「優しいあの子」について。
同楽曲は、4月1日から放送を開始している
広瀬すず主演、NHK連続テレビ小説の
記念すべき100作目である
「なつぞら」の主題歌となっています。
キャスティングや
ストーリーはもちろんのこと、
主題歌も注目を集めています。
今回は「優しいあの子」の
歌詞の意味を考察をしていきます。
主題歌の意味を考えることで
ドラマもより楽しめるのではと思います。
それでは解説してまいりましょう。
スピッツ「優しいあの子」歌詞
優しいあの子 作詞 草野正宗
作曲 草野正宗重い扉を 押し開けたら
暗い道が 続いててめげずに歩いた その先に
知らなかった 世界氷を散らす 風すら
味方にも できるんだなぁ切りとられることのない
丸い大空の 色を優しいあの子にも 教えたい
ルルルル
ルルルル
ルルル~ルル口にするたびに 泣けるほど
憧れて くだかれて消えかけた火を 胸に抱き
たどり着いた コタン
↓こちらは、「ことだま」さんによるカバーです。ご参考まで。
スピッツ「優しいあの子」歌詞の意味を解説
重い扉を押し開けたら
(=戦争を切り抜け生き残ったが)
暗い道が続いてて
(=両親は死んでしまって、兄妹とも離れ離れになってしまった)
主人公から見た戦後直後の
暗い世界観を表していると解釈します。
主人公が戦争で両親を亡くし、
父親の友人柴田剛男に引き取られた直後は
気持ちが沈んでいたことでしょう。
兄妹は別々に養子に出され
離れ離れになってしまって、
とても不安な気持ちだった
というのがこの部分に表れています。
めげずに歩いた
(=柴田剛男に連れられて北海道・十勝に向かった)
その先に 知らなかった世界
(=北海道・十勝に到着 今まで見たことがなかった北海道の悠々たる自然に幼いながらも感動)
※ここでは、落ち込んだ気持ちに負けずに
柴田剛男と一緒に北海道・十勝に
向かったところが描かれています。
それまであまり自分の住んでいる地域から
出たことのなかった主人公にとって、
北海道の悠々たる自然は
新鮮そのもので感動したと解釈しました。
畑の広さなど桁違いなので、
主人公からしたら
別世界のように感じたとしています。
氷を散らす 風すら味方にも できるんだなぁ
(=厳しい冬があるからこそ、
皆が待ちに待った夏空があるということ。
→公式サイトで公開された
スピッツのボーカル草野さんのコメントによると、
北海道を訪れた際に感じたことを
そのまま歌詞にされたそうです。)
苦しかったり辛かった経験すらも
今思えば自分の糧になったなと
主人公が思っていると考察しました。
この曲は幼少時代から少し経ち
成長した主人公の視点の歌だと思っています。
だなぁという語尾から推測して、
過ぎた日々を懐かしみ、幼少時代の苦労も
無駄じゃなかったと思っているシーンです。
一見意味のないように思うことでも
ちゃんと意味があって
今に繋がっているのだなと
主人公が思うシーンですね。
切り取られることのない丸い大空の色を
(=戦争の空襲の煙などで濁ることのない、この雄大な北海道・十勝の空の青さを)
ここでは、戦争の空襲によって
灰色の曇った空ばかり見てきた主人公にとって、
北海道・十勝で見た大空は
よりいっそう綺麗にうつっていると解釈します。
切り取られることのないという部分から、
もう戦争も終わった、
失う心配をしなくていいという
安堵もこの部分から感じます。
優しいあの子にも 教えたい
(=離れ離れになった妹に教えたい・見せてあげたい)
あの子という、
自分より立場が弱い人に向ける表現と
妹をおぶって食料を恵んでもらいに行く
シーンがあることから、
優しいあの子は妹のことと推測します。
自分が見た美しい空のことを、
仲の良かった妹に教えてあげたいと
思いを馳せているシーンです。
自分が良いと感じたものは、
親しい人に教えたくなりますよね。
ルルルル ルルルル ルルル~ルル
(=主人公の思い出の曲。たとえばお母さんが歌ってくれた子守歌など)
スピッツのボーカルの方の歌声もあって、
優しい響きですが少し哀愁も感じる部分です。
思い出の曲を口ずさんでいると解釈できます。
そしてそれが
亡き母の記憶の一部だとしたら…
という仮説を立てました。
口にするたび 泣けるほど
(=今は亡き母の思い出である、この歌を口ずさむ度泣いてしまうほど)
憧れて くだかれて
(=家族という存在に憧れるけれど、
なかなか上手くいかなくて
→戦争孤児であり幼女として柴田家に引き取られ、
そこでの家族関係に悩んでいると考察します。)
その歌を口にするたび、
今は亡き母親という存在に憧れて、
でも存在しないのだと思い知らされ
その結果絶望する、そんな繰り返しなのでしょう。
泣けるほどの何かって
何だろうと考えた際、
思い当たったのが主人公の両親の記憶です。
その中でも母親の記憶は
子供の中に強く残るものなので、
小さい頃からずっと聞いていた
母親の子守歌という仮説を立ててみました。
長い間聞きなれていたメロディーであり
自分も覚えているという設定です。
消えかけた火を 胸に抱き
(=度重なる不幸に見舞われ絶望しながらも懸命に生きていこうと決心する主人公)
たどり着いたコタン
(=やっと見つけられた私の居場所)
消えかけた火とは
主人公が持っている希望のことです。
その希望の火を絶やさないよう
懸命に生きようとする
主人公の姿が見て取れます。
そして、自分の居場所を
見つけることができたと最後に言っています。
本来コタンとはアイヌ語で集落です。
しかしここでは、
自分が安心できる場所
という意味で居場所と訳しました。
コタンという響きに
柔らかさや温かさを感じます。
心温まる雰囲気を
この言葉の響きで伝えたかったのだと考えます。
楽曲についての所感
歌詞にはほんの1小節を取っても
鮮明な情景を
思い浮かべることができる奥深さを感じます。
1節1節が深い意味を持っています。
重みのある歌詞なのに、
軽やかに聞こえるのは
ボーカルの草野さんの力量でしょうね。
あの少年のような
ピュアで優しい声と相まって、
アニメーションのオープニングや
本編の世界観にピッタリとハマっています。
最後に
辛い境遇にありながらも
懸命に前を向いて生きていこうとしている
主人公の語り、というイメージで
解説させていただきました。
こちらの楽曲はシングルとして
6月19日に発売予定と発表されています。
おそらくMVも現在制作されているでしょう。
それとともに
ドラマの展開も目が離せないですね。